平成28年度宮城県高校総体で2年ぶりの優勝を果たした東北生活文化大高女子ソフトボール部。平成24~26年度3年連続優勝し、昨年度は準優勝に終わったが、その悔しさをバネに再び宮城県の頂点を勝ち取り、今年の夏広島県で行われたインターハイに出場した。
県内屈指の強豪となった生文女子ソフトボール部への入部の理由は何だろう。ショートの2年生菊地夏乃子は仙台市立沖野中学校から入学した。「3つ年上の姉が生文でソフトボールをしていて、中学生の時から練習に混ぜてもらっていました。一番は先輩方の姿を見て、ソフトボールが上手いのはもちろん、言動が堂々とハキハキしていてすごく格好良いなという印象を受け、全員が同じ意識を持ってソフトをしているというのが伝わりました。入ってからはついて行けるように頑張りました」。1年生でキャッチャーの及川莉奈は登米市立米山中学校からの入学で現在は寮生活。「先輩方の教えもあって今はだいぶ慣れてきました」と優しい先輩の助けもあり、入学してまだ数ヶ月ながら寮生活にも慣れているという。「中学校の時から何度か練習に参加させていただきました。大会が終わって引退してから顧問の先生から行かないかと言われました。中学時代の県大会では3年間エースピッチャーに最後まで投げさせてあげることができず、バッターとしても県大会最後の打席が自分で終わってしまい、ものすごい後悔があったので、高校で本気でやってみたいと思い、練習参加しました。進学希望なのですが、勉強しながらソフトができるのが決め手でした。そして東北大会の先輩方のプレーがとても格好良かったです」。
2人とも練習に参加した上で入学・入部を決めている。顧問の志摩有亮は「とにかく練習に参加してもらって、生のうちのチームを見てもらって、ここが良いな、やれると決めた子たちに来てもらいたいです。結果だけを見てイメージだけで入って来てしまうと苦労すると思います。なぜトップを取ったか、なぜ勝てているのか本質を見てもらわないと厳しいので、ぜひ体験して欲しいです」とまずは練習参加を勧めている。
強豪となっている本質の部分とは何だろうか。菊地は1年生の時、あることを理由にスタメンを外れたことがあったという。「夏の大会で『家では全部何でも親にやってもらっていて親に頼っている』ということを言われて、1回スタメンから外された時期がありました。それをきっかけに自立しようと考えて、自分で洗濯や掃除をするようになってからソフトボールの技術も上がって考え方も変わりました。最初は何で?嫌だな、と思いましたが、志摩先生や先輩方の言葉のおかげで変わることができたので今はとても感謝しています」。一見ソフトボールとは関係ないことが実はソフトボールとつながっている。「私生活=ソフトボール、という言葉が印象に残っています」と菊地は語る。
1年生の及川も「ソフトボール部は礼儀がしっかりしています。中学校の時は顧問の先生にため口で話したりしていましたが、教えていただいている先生に対する態度がそれではダメなのだと知りました。常に先生、保護者、仲間へ感謝し、勝利への執念など気持ちの面でもっと強くなっていきたいです」と礼儀をしっかりすることで、気持ちの部分を調えようとしている。菊地は「生徒の模範がチームの目標です。自分たちの挨拶や服装、礼儀が他の部にも広がっていて、立ち止まって挨拶したり言葉遣いがしっかりしてきたり、良い影響が与えられているのは良かったです」。ソフトボール部は学校を引っ張る存在ともなっている。顧問の志摩は「宮城県の中で勝てば良いやというのではなく、県外でも勝つチームを目指しています。それなりの量の練習量にはなりますし、意識も必要です。最初は少々力がなくても、人としての根本の部分でしっかりやれる子、一生懸命やる気持ちがある子なら上手くなっていきます」。人として自立し、礼儀礼節を重んじることが、ソフトボールの技術向上につながる。そうした姿勢が伝統になっていることが県内の強豪として力をつけた理由だ。
これから生文女子ソフトボール部を目指す中学生に向けて、菊地は「ソフトボールが好きというのが一番です。やらされるのではなく、自分が一番ソフトボールをやりたいんだ、という強い意識があれば絶対くじけません。姉も生文でソフトボールをしながら人としてどんどん変わっていきました。技術だけでなくて人間的にも成長できる場なので、自分を変えたいと思うならばぜひ入って欲しいです」とメッセージを送る。
及川も「本気でソフトをやるならぜひ生文のソフト部が一番良いと思います。先生も先輩も勝ちたいという思いが強いです。ここに入れば強くなる、ということは無いですが、努力する気持ちがあれば上手くなるので、そういう気持ちがある人にぜひ入って欲しいです」と語る。ソフトボールの技術向上のみならず、人間的に成長したいと思う中学生には、練習参加の上で、ぜひ生文女子ソフトボール部の門を叩いて欲しい。共に高みを目指す仲間を待っている。